田中センセイの徒然日誌[35]残さず食べた子どもたち

[35]残さず食べた子どもたち

 

 食品ロスの問題が取り上げられるなか、中国で「反食品浪費法」なる法律が施行された。中国では、宴席などで食べきれないほどの料理で客をもてなす風習がある。そこで、必要以上の注文をさせた飲食店には罰金を科するというものだ。そのうえ、大食い動画などを投稿した人にも罰金が科せられるそうだ。

 

 学校で食品ロスというと、給食の残飯の問題がある。多くの学校で、栄養士や給食担当の教員が、残飯をなくすために様々な取り組みをして、子どもたちに食べ物の大切さを教えている。

 

 さて、わたしが、以前小学校で担任をしていた学級でのことだ。その日は、インフルエンザで校内に欠席者が多くなっていた。6年のわたしの学級は幸い欠席者もなく、子どもたちはいつもと同じように元気に給食を食べていた。よく食べる学級で、いつも残飯ゼロ。食べ終わった後、「おなかすいた」と声があがるほどであった。

 

 そこに突然、低学年の児童が給食のおかずを入れた食缶を持って現れた。「欠席者が多いので給食が余りました。食べてもらえませんか」

 

 その一言に学級の子どもたちは、わたしの顔を見て微笑みながら同意を求める。わたしがうなずくと、一人が「ありがとう」と食缶を受け取り、配膳を始めた。

 

 この日のことで味をしめた子どもたち。それから、時々給食の時間、空の食缶を持って校内を歩き回っていた。

 

 考えてみると、食品ロスは、あるものを残さず食べることが基本だ。時々、テレビの大食い番組などで食べ切れない量に挑戦して残す場面を見ると、少し疑問がわいてくる。残さない量の提供と残さず食べるマナーが食品ロス解消には必要なことだと思う。

 

 卒業したあの子どもたち、きっと今でも残さず食べているだろうな。 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2021年6月30日 15:10)
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