田中センセイの徒然日誌[37]声が届くには

[37]声が届くには

 

 新型コロナウィルスや2020東京オリンピック・パラリンピック絡みで、政治家の方が「安心安全」を力強く訴える場面を幾度となく目にしました。最近は、なかなかその声が国民に届いていないんじゃないかという報道がされる中、「どういう形で広報すれば、国民に理解していただけるのか。周知を徹底していきたい」と、政治家の方が述べたようです。

 

 理解してもらうように伝えること。まさに、授業をする時の一番の悩みでした。伝えたいことを熱心に伝えようとするほど聞いている方は、逆に冷めていく。そんな経験も何度もしてきました。工夫して、いろいろな資料や道具を用意した時も、それに頼ってしまって伝えたいことが散漫になったこともありました。

 

 カウンセリングの基本的な方法に「受容 --傾聴 -- 共感的理解」があります。コミュニケーションをとる時にも役立つ手法です。これを参考に、こちらが伝えるんだという意気込みを抑えて、

 

「相手が何を聞きたいか」

「それに対してどんなことを思っているか」

「相手の気持ちになったら何をどんな言葉で聞きたいか」

 

を考えてまとめ、伝えると、まあまあ授業もうまくいくものです。

 

 悩んでいる政治家の方にも、ぜひこの方法を試していただければと思います。

 ただ、子どもとの人間関係がうまくいってないと授業はなかなか成立しないので気をつけないと......

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2021年8月31日 16:00)
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