[38]失われた機会をもう一度
2021年9月21日(火)は中秋の名月でした。8年ぶりの満月で、来年、再来年も中秋の名月が満月の日と重なるそうです。新聞各紙やネットでは、様々な月の写真を載せていて、どれにもドラマを感じ、楽しめました。
理科の授業で、月や星について学ぶ項目があります。実際の月や星は夜にならないと見られないので、どうしても絵や映像で進める授業展開になってしまいます。実際の月や星を見ながら授業ができたらどんなにいいだろうなと思います。
そんな思いを少しだけ叶えたことが、昔ありました。ひとつは、地域の方々が開催してくださった秋の「月見の会」。夜、芝生が敷かれた校舎の屋上に借りてきた大型望遠鏡を設置して、子どもたちと月や星の観察をしました。もうひとつは、スキー学習で訪れた冬の福島県会津地方。雪山で澄み渡った夜空を見上げ、星座の名前を早見表と照らしながら子どもたちと確認しました。
どちらの経験も、わたしの心には深い思い出として刻まれています。子どもたちにも、普段の授業とは違った内容が伝わったと信じています。
コロナ禍で、修学旅行をはじめ体験的な学習の機会が失われました。また、オンライン授業の普及で普段の経験も限られてしまっています。
失われた時を戻すことはできませんが、失われた機会をもう一度作ることはできます。同じ気温、におい、風や木々のざわめきなどの中で、時間と空間を共にする機会を増やしていきたいものです。
GIGAスクールのバーチャルの経験ばかり増えませんように。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。