[41]カメが伝えたかったこと
2021年わたしのMIN(Most Impressive News)は、「カメ『ウミガメ』機止めた」(読売新聞9月25日朝刊)でした。成田空港の滑走路を一匹のカメが歩いていることがわかり、「空飛ぶウミガメ」の愛称で知られる全日空の超大型機「FLYNG HONU(フライングホヌ)」などの離陸が遅れたというニュースです。小さなカメが巨大な飛行機を止める。想像しただけでも痛快で楽しい内容でした。なかなか有難い事であったのもニュースとしての価値があります。
学校が長期休暇などに入って、子どもたちが来なくなると、校舎はがらんとした静けさに包まれます。子どもたちの活気にあふれた日常を知っていると寂しさをも覚えずにはいられません。コロナ禍で休校を余儀なくされた時も多くの教師がそう感じたのではないでしょうか。
そんな校舎の中を見回りなどで歩くことがありました。すると、誰かがいるかのように「ガサガサ」「シャカシャカ」という音が聞こえてきます。何だろうと確かめに行くと、ピタリと音が止みます。気のせいかとまた歩き出すと、また音が聞こえてきます。夕闇が迫り、「学校の七不思議」が頭をかすめると、思わず背筋が寒くなります。
音源は、いくつかの教室で飼われていたカメでした。水槽の砂利をなぞったり、側面をたたく音が響いたりしていたのです。
カメは長寿・金運などをもたらす縁起のよい生き物とされています。ハワイでは幸運を呼ぶ使いといわれているそうです。
飛行機を止めたのも幸運を呼ぶカメではないでしょうか。そして、「人間たちよ、もっとゆっくり生きていいんではないか。カーボンニュートラル目指して飛行機の発着も控えたらどうじゃろうかな」。なんてことも伝えに来たような気がするのです。 |
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。