田中センセイの徒然日誌[42]雪の日の子どもたち

[42]雪の日の子どもたち

 

 2021年年末から2022年年始にかけて、大雪のニュースが連日流れました。私の住んでいる東京も「都心積雪10センチ 4年ぶり」という見出しの記事が新聞に載るほどの雪が降りました。大雪になると交通が乱れ、転倒事故なども起こり、注意が必要です。

 

 

 一方、子どもたちは大喜びです。「子どもは風の子」ならぬ「子どもは雪の子」。登校するやいなや降る雪や寒さをものともせず校庭へ飛び出して大騒ぎです。こうした日は、たいがい交通の遅れなどで先生たちの出勤が遅れることが多く、なんとか定時に着いた先生たちだけで1時間目をしのがなければなりません。学校によりますが、わたしが勤めてきた学校は、1時間目は「雪遊び」になりました。少ない教員の数で子どもたちの見守りをするための方策でもありました。

 

 あまり大雪を見たことがない子どもたちにとって、まさに驚愕と歓喜の世界です。校庭や中庭に飛び出した子どもたちは、雪を投げたり、雪だるまやかまくらを作ったりして元気に動き回ります。真っ赤な頬、手袋の脱げた素手。見守るこちらのほうが、身震いしてしまいます。

 

 この後が大変です。教室に戻ると、濡れた物を暖房のきいた教室内に干します。水分と汗が蒸発して教室は湿気とにおいが充満します。それでも子どもたちの顔は満足感で満ちています。

 

 雪は、自然界の厳しさを人間に教えますが、接することが少ない子どもたちにとっては、かけがえのない喜びも与えてくれます。その体験こそ何よりの学びではないでしょうか。

 

 そして、あの日の教室のにおいも、忘れえぬ体験ではあります。 

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2022年1月31日 16:52)
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