田中センセイの徒然日誌[43]名前に込められた思い

[43]名前に込められた思い

 

 <鹿児島県の干潟で発見された新種の甲殻類。その名も「オシリカジリムシ」だ!!>

 

 思わず笑みがこぼれたニュースだ。「鹿児島大の大学院生・是枝伶旺(これえだ・れお)さんが昨年5月、ハゼの一種を捕まえたところ、その尻びれに、全長1.3mmの生物があごをフックのようにして "かじりついて" いたという。甲殻類の分類に詳しい鹿児島大の上野大輔准教授に調べてもらった結果、新種と判明。NHKの歌番組の人気キャラクターにちなんで、上野准教授が命名した」(2022年2月11日読売中高生新聞)そうである。

 

 漢字の勉強をしている時、子どもたちに自分の名前の由来は何だろうとよく問いかけた。子どもたちはすごく興味を持って、漢字の意味を調べたり、おうちの人に聞いたりと調査に奔走する。すでに聞いていて、すらすらとその由来を話してくれる子どももいた。

 

 命名はたいへん崇高な作業だと思う。名前に込められた思いや期待を知ることで、子どもたちは自分に対する自信や肯定感を得ることが多い。反面、「名は体を表す」「名に恥じぬ働き」などと言われて一生のプレッシャーになることもある。

 

 たとえば、「アホウドリ」。最近小笠原諸島・聟島(むこじま)で、人工飼育世代の「孫」にあたるヒナの誕生が初めて確認された。決して「アホウ」ではない。東邦大学名誉教授の長谷川博さんがおっしゃっているように、気高く優雅な「オキノタユウ(沖の大夫)」という名前に変えてほしいものだ。

 

 それにしても、新型コロナウィルスの株にもギリシャ文字から次々名前がつけられている。アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、ラムダ、ミューなどと続き、オミクロン。もうこの種の名前は増えないでと、せつに祈る。

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2022年3月 2日 14:47)
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