[44]騒音と言われるけれど
コロナ禍で学校行事は大きな変化を余儀なくされた。中でも運動会は、様々な形に変化したようだ。コロナ後どうなっていくのか、教育改革の名のもとに行事の精選が叫ばれているだけに注視していきたいと思っている。
運動会の記憶の中で、よく思い出すのが騒音(?)に対する苦情だ。集団演技などの練習で熱が入った指導の声はマイクを通して子供たちを鼓舞し、表現運動の音楽が思いのほか大きな音量で流れてしまう。地域によるが、とたんに職員室には苦情の電話がかかってくる。 「指導するのはマイクがなくてもできませんか」 「スピーカーの配置がおかしいから近隣に音が流れるんですよ」などなど。 電話に出た職員は平謝りするのみだ。好き好んで大音量にしているわけではない。運動会当日に地域・保護者の方々に子供たちの輝いている姿を見せたい一心である。
隣の家のカエルの鳴き声が耐えられないと「すべてのカエルの駆除」と75万円の損害賠償を求めた訴訟が起きたというニュースがあった。この賠償請求は棄却されたが、自然の音までも訴えるという世の中だ。
「近隣の皆様には、練習の期間から今日に至るまでご迷惑をおかけいたしました。子供たちは精一杯の演技で皆様のご協力に報います。今日一日ご理解のほどよろしくお願いいたします」 運動会の開会式での校長のこんな挨拶がなくなる日は、来ないのかな。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。