田中センセイの徒然日誌[47]値上げに対抗 声も上げよう

[47]値上げに対抗 声も上げよう

 

 値上げのニュースが続いている。調味料から総菜まで、さまざまなものが値を上げていく。そして菓子類。中には値段は上げないが、量を減らしているものがある。人気のチョコチップ入りのクッキーが20枚入りを19枚にした。これは、お菓子を分ける作業をする者にとっては大問題だ。40人の子どもたちにクッキーを分ける場合、20枚入りならば2袋で済むのだか、これからは3袋買わなければいけない。大きな出費である。しかもたくさん余ったクッキーをどう処分するかでまた頭を抱えなければならない。

 

 学校でお菓子を分ける作業はあまり聞いたことがないが、保育園や幼稚園、地域のイベントなどでは行われる。割り切れないからと言って人気のクッキーが平凡なクッキーに代わってしまったら、子どもたちの嘆きはいかばかりであろう。

 

 教師になりたての頃、遠足の時には「○○円分のお菓子を持ってきて良い」という子どもたちにとって夢のような声がけをしていた。お菓子を持ってきて良いというだけでなく、子どもたちにとっては○○円分の買い物ができる楽しみがある。聞いてみると、安い店を探したり、友達と品物を分け合って買ったりと子どもたちはいろいろ工夫していた。そんな声がけもあまり聞かれなくなり、最近では、アレルギーの心配から友達同士の食べ物の交換はNGが多い。

 

 コロナ禍から徐々に普段の教育活動を取り戻しつつある現在。遠足の時、お菓子を持ってきていいよという話でなく、ひとつの声がけで子どもたちが沸き立つように楽しむことができることを見つけたいものだ。

 

 上げるのは値段ではなく、大人たちの知恵をしぼった声であってほしいものだ。

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2022年7月 5日 11:16)
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