[48]ウルトラマンの偉大さ
「ゴーグルはつけていいですか?」 学校のプール指導の時、児童から突然出た質問だった。当時の職員室は大慌て。「スイミングスクールでは当たり前だ」「塩素が目に悪い」の賛成意見。「紛失したりすると責任が持てない」「途中で壊れたらかえって危険だ」との反対意見。様々な意見が交わされた。次には、「ラッシュガードは着てもいいですか?」という質問。それなりに理由があることなので、「保護者の責任の下で認めます」というのが、わたしが在職してきた多くの学校の見解だったと覚えている。
そんなことを思い出しながら、「スクール水着にジェンダーレスの波」(読売中高生新聞2022年6月17日)という記事を読んだ。こうした水着が普及すれば、生徒たちはより伸び伸びとプールの授業に参加できるし、かつての質問の一部が無くなって先生方も悩むことが減るだろう。生徒にとっても先生にとっても、教育現場でのジェンダーレスはさらに進めていくことが必要だと思う。
この夏は、環境省と気象庁が発表する熱中症警戒アラートが、多くの都道府県に頻繁に出されるなど、危険な暑さが続いている。道行く人は冷却スーツ、首には冷却グッズ、サングラス、日よけの傘を身につけている。もちろん、コロナの勢いも衰えることなくほとんどの人がマスク姿だ。
うーん。こうなると、普段の服装もすべての人が効率の良い服装に統一したらどうだろう。どんな暑い時も心地よい体温を維持し、強い日光を遮断できるゴーグル、マスク付きの仮面をかぶり......と、しょうがない想像を巡らしていたら、幼い頃のテレビ番組を思い出した。そうだ、ウルトラマンだ。 そういえば、掛け声の「シュワッチ」は「手話で」という呼びかけにも聞こえる。この暑さの中でボーっとしながら、改めてウルトラマンの偉大さを知ったような気がした。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。