[49]子どものエネルギー
客が自転車をこいで発電した電気で作るかき氷の移動販売店が登場したそうだ(2022年8月1日読売新聞埼玉版)。本来は焼き芋の店で、リヤカーでの販売中に停電したときに常連の子どもから「自分で発電すればいいのに」と言われたのがきっかけだったという。全国的な電力不足で悩む中、なかなかのアイデアではないか。子どもの発想は素晴らしい。
「子どもからエネルギーをもらっています。」という言い方をしばしば耳にする。確かに教室の中は、エネルギーに満ちている。ひとときも休むことなくしゃべり続ける(コロナ禍ではつぶやくようにだが)。危ないと言っているのに走りまわる。しまいにはじゃれ合って騒ぐ姿は日常茶飯事だ。
エアコンがなかった昔のことだ。 暑い夏場、そのエネルギーは脅威だった。子どもたちが教室に入ると、室温はぐんぐん上昇。授業が進むにつれて、私が着ていたTシャツは色がわからないぐらい汗でびっしょりになった。日に何回か着替えたことを覚えている。 しかし、逆に寒い冬場は、ありがたかった。子どもたちが教室に入ると、室温は自然に上がって寒さが緩み、過ごしやすい温度に落ち着く。
教壇を去って、そんな昔の教室の様子を思い浮かべると、教え子の顔が一人一人浮かんでなんとなく心が満たされる。子どもたちのエネルギーは心身に届くものなのだなと思う。
日本のエネルギー不足を補うには、子どもたちがエネルギーを発することのできる環境を整えてあげたいものだ。きっと心も満たされるに違いないから。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。