田中センセイの徒然日誌[60]猛暑が促す時代の変化

[60]猛暑が促す時代の変化

 

 わたしが初めて赴任した小学校のプールは、校庭の半分を掘ってつくられたものだった。普段は鉄板で覆われていたので、校庭の半分は鉄板というわけだ。運動会のときは、トラックのひとつの曲がり角が鉄板にかかっていてすべりやすい。でも、慣れたもので、すべって転んでいる子どもはいなかった。

 夏になると、鉄板がはずされプールが現れた。今思えば不思議な光景だが、当時はそれが当たり前で違和感はなかった。子どもたちは暑い夏のプールを楽しみにしていて、水を掛け合ったり浸ったりして涼んでいたものだ。

 

 最近、そんな学校プールの様子が変わり始めている。

 昔は、気温と水温の合計が50℃以上でないとプールに入れないと言われ、なかなか水温が上がらないときは、水をかき混ぜて子供たちの期待に応えていたこともあった。ところが、今は気温と水温の合計が60℃以上にもなり、加えて熱中症アラートと、学校プールを阻むものが多くなっている。プール指導自体の見直しも進められ、水泳の授業を民間のスイミングクラブに委託することも行われ始めているという(2023年6月27日読売新聞朝刊)。

 

 今年の猛暑は、暑さをわたしたちにもたらしただけでなく、時代の変化を促しているような気がしてならない。コロナによって中断された様々な教育活動を今後どのようにしていくのがいいか。前向きな大胆な議論や決断がなされてほしいものだ。

 

 校庭の鉄板の下にプールがあった大正時代のモダンなあの校舎も何十年か前に建て替えられた。熱中症アラートの中、炎天下の部活や甲子園も変化が必要ではないかな。

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2023年9月 6日 12:33)
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