ぬまっち先生コラム84 中学生がやってきた(3)

教室の後ろにはパソコンが。休み時間にタイピングゲームをする子どもたち(5月31日、世田谷小で)

沼田 晶弘


 

■中学生から質問を受ける


 子どもたちが帰った後の教室で、ボクは4人の中学生に囲まれて、レポートのためにいろいろな質問を受けました。

 

Q 「DISCOVER」とか、教室の中でいろいろ英語を使っているのはなぜですか。

 

ボク まず、カッコイイから(笑)。でもそれだけじゃありません。今年度から時間割の教科名を全部英語にしてるんだけど、子どもたちが中学校に行った時のことを考えています。ここで一個でも単語覚えるとラクだから。これもアナザーゴールの一つなんです。

 小学校の国語で「日本語の美しさを知る」って目標があるんだけれど、ボクのクラスでは、「竹取物語」「源氏物語」「枕草子」の冒頭部分を何度も読ませて、暗誦できるまでやります。<5代目・世界一のクラス>の6年生なんて、「源氏物語」をラップ調にして歌ってました。どうせ中学校で学ぶんだから、今覚えちゃうと必ず役に立つ。この間、中学生になった教え子からすごい感謝の手紙をもらった。国語で抜き打ちテストがあって、ボクのクラス出身者は全員合格したらしいんだよね(笑)。カラオケ行って、英語の歌を歌ってたら、自然に英単語覚えるのと同じ原理ですよ。

 

 何で教室の後ろにパソコンを置いているんですか?

 

ボク 今の時代、やっぱりパソコンがあった方が調べものがしやすいから。キミたちはスマホで文字を打つのが得意だと思うし、iPadを教室に配備しようという動きもあるけれど、大人になったらまだパソコンが必要だとボクは思ってます。だから、休み時間はタイピングゲームだけやっていいことにしています。タイピングができる方が将来有利だから。これもアナザーゴールです。まあ、キミたちが大人になることは全部音声入力になっているかもしれないけど。

 

■「やらされる」と「任される」


Q 「勝手に東京観光大使」のスケジュールを、子どもが決めてましたが......。

 

ボク 先生が決めるより、子どもたちが決めたほうがいいでしょ。子どもたちもボクの考えていることがわかってるから、大体予想通りの期限になったんですけど。

 「Iメッセージ」って言葉があるでしょう。「オマエは○○をやれ」とこちらが命令するんじゃなくて、「ボクは○○をやる」って相手に言わせるようにする。そのためには、命令されたんじゃなくて、「任されたんだ」と相手に思ってもらうことが大事。でも、「やらされた」と「任された」は、本質的には同じことなんですよね(笑)。その違いは、子どもと先生の間に信頼関係があるかどうか。だからボクは子どもたちに決めてもらいます。

 

Q 教材はどう工夫していますか。

 

ボク 子どもたちが身近に感じられるようにアレンジしています。例えば今日の「勝手に東京観光大使」でも、キミたちがコンビニの話をしてくれたから盛

 

■わからなければ、子どもに聞く


Q 自分に苦手な教科があって、わからないことがあったらどうしますか。

 

り上がった。自分の周囲に何軒コンビニがあるかなんて、東京の子は普段考えない。コンビニがあまりない地域もあると聞いて、「そうだったんだ」と思った子が半分くらいいたはず。「東京にはどのくらい自然があるか」という疑問も出してくれて、あれで子どもたちは俄然調べる気になったと思う。だから、キミたちが今日いてくれてよかった。教材は、なるべく子どもたちが見たり触れたり実感できたりするものを選ぶようにしています。

ボク 子どもに聞く。先生が何でもかんでもすべて知っている必要はない。先生だってわかんないこといっぱいあるさ。わからないことがあったら子どもと一緒に考える。それがただのポーズではダメなんです。「先生はどうせ答えを知ってるのに聞いてるんでしょ」と思われたら、子どもはついてこない。中学生だってそういうの嫌でしょ? ボクは自分が本当に知らないことを子どもに聞いてるから。もちろん、先生として最低限のことは知っていないといけないけれど、「先生は全部知ってなきゃダメ」と思って先生になると疲れるよ~(笑)。

 

 どうやら、4人のうち2人は本当に先生志望のようで、質問にもだんだん熱が入ってきました。ボクも大人に取材されるのとちょっと違うので、なんだか課外授業みたいになってきています。

 

ボクの黒板にはよく英語が登場します

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(2017年9月18日 10:00)
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