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18歳になったら
2021年1月27日
私は都内の大学で経済の現代史のようなものを講義しています。同時に専門学校で時事問題の講座の運営も担当しています。ともに4年ほどやっていて、今年度が最終年度なのですが、両方の授業が完全にリモートになってしまい、学生には会えずじまいでした。専門学校では昨年6月以降、月に一本、五者択一の問題と、解答者の主張を展開する論述式問題をまぜこぜにした"リポート"を出題してきました。
初回にあたる6月のテーマは『選挙制度を学んでみよう』でした。相手は専門学校1年生なので、18歳の人が多く、獲得したばかりの選挙権を早く、自分や社会のために最大限に有効活用して欲しいという狙いからです。
リポートの中の問題にも「自分が選挙権を持った感想を教えてください」という質問を盛り込みました。「大人になった感じがする」といった可愛げのある回答が多かったのですが、中には「自分の希望や主張を政策に生かしてくれる政治家に積極的に投票したい」という、立派な意見もありました。
こういう「政治的な若者」がどんどん増えてほしいと思います。私は1980年代の初めに大学を卒業して今夏に65歳になりますが、私よりちょっと先輩の人たちにとっては「政治的な若者」というのは革命的な思想を抱いて学園紛争に首を突っ込む、というイメージが強かったように覚えています。
でも、今ここでいう「政治的」な行動というのは、民主主義の下で社会が安定しながら発展していく筋道をきちんと選択、実行できること、と言い換えても良い気がします。
若者が判断しなくてはならない、そういう「選択」は、まさに山積状態だと思います。国内では少子高齢化が進む中で、税金や年金制度をどう改良していくか、世界規模では地球環境を改善するために再生エネルギーをどう浸透させていくのか、などを早急に考えていくことが不可欠になるでしょう。
私たち大人も方策を考えますが、意見を集約し、結論を下していくのは若い世代でしょう。こうした問題は長期の検討が必要ですが、「そのうちに考えていけば良い」といった無責任な姿勢ではなく、若い人たちには今日から考えてほしい、そうでなくては間に合わない問題ばかりのような気がします。
いろいろ述べてきましたが、せっかく、18歳でも投票できるようになったのだから、18歳になった人は、すぐに「政治的な問題」に真剣に取り組んで、投票行動を起こしてほしい。実際には18歳になった途端に行動を起こせ、といっても難しいので、中学や高校で国内外の社会を取り巻く問題の本質をしっかり学んでほしいと願っています。(重)
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