好きだから、仕事にしない《記者のじぶんごと》

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 「おおきくなったらなんになる~♪」

 4歳になる長男が、幼稚園で覚えた歌を毎日のように口ずさんでいます。

 「1本」の指は注射をする「お医者さん」、「2本」の指はハサミで髪の毛を切る「床屋さん」、指遊びをしながら、楽しそうに歌います。ちなみに、長男がなりたいのは「車掌さん」。理由はご想像の通り、「でんしゃがいちばんだいすきだから!」。

 

 昨年度も、「キャリア(職業)教育」をテーマにした出前授業で多くの小中学校にお邪魔しました。新聞記者のやりがいや、大変なこと、についてお話しします。子どもたちからの質問は「給料はいくらですか?」「休みはありますか?」などが定番ですが、最近では、「読売新聞はどんなSDGs活動に取り組んでいますか?」という質問も増えてきました。未来を担う子どもたちに、仕事の内容だけでなく、「仕事を通じてどうやって社会に貢献していくか」、という視点が生まれてきていることを頼もしく思います。

 

 「大学3年生の2割が3月1日時点でもう内定」。3月26日の読売新聞にこんな記事が載っていました。コロナ禍でも就職活動(就活)の早期化は止まらず、大学生たちの準備も年々早まっています。1年生から積極的に就活講座に顔を出したり、長期のインターンシップ(就業体験)に応募したり、というケースも耳にします。それぞれの「夢」をかなえるために、動き出しは早く、という傾向が定着したようです。

 

 「いろいろ悩みましたが、好きなことを仕事にするのは諦めました」。そんな中、この春卒業した大学4年生から、こんなメールをもらいました。小さい頃からの夢だった舞台の仕事に就きたいと、一時は真剣に考えたそうですが、「裏方でもいいから、趣味として長く続けていける方が自分には合っていると思って⋯⋯」。4月から、事務職として一般企業に勤めながら続けていくことを選んだそうです。就活のゴールは人それぞれ。今さらながらそんな当たり前のことに気づかされました。

 

 ちなみに「おおきくなったら」の「5」の指は両手を広げて「どすこい」のお相撲さん。ところが、誰が教えたのか、長男は「車掌さん」と替えて歌っています。理由は、「いつもホームで、バイバイって手をふってくれるから」。そんな長男も、いずれは、「働きがい」という視点で仕事を考えるようになる日が来ることになるでしょう。「好きなことを仕事にする」という仕事選びもあれば、「好きなことだからこそ、仕事にしない」という選択肢もあっていい、選んだ道を、精一杯応援できる親になっていたい、と思います。

(石橋 大祐


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(2022年4月 5日 15:10)
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