2030 SDGsチャレンジ

じぶんごとからはじめよう®

韓流スターとおそろいだったボールペン《記者のじぶんごと》

ペ・ヨンジュンさんを表紙やインタビューで特集した「読売ウイークリー」とボールペン「オプト」

16.


 受験シーズンだが、あなたはいまどんな筆記具を使っているだろうか。

 子育て中、いまはこうなっているのかと都度感心したのは鉛筆だった。

 子どもの小学校入学前に初めて3Bの鉛筆を買った。自分が子どもの時に使っていたのはBかHBだったが、入学準備コーナーには2B、3Bの鉛筆がずらりと並んでいた。

 

 

 濃い鉛筆の使い心地については私も承知している。新聞制作は1980年代後半からデジタル化が進んだが、記者になってしばらくは鉛筆で原稿を書いていた。そのとき使っていたのは、丸軸の4Bの鉛筆だった。社の備品で社名入り。職場のそこここに原稿用紙とともに大量にあった。自分で調達した5Bを愛用する先輩もいた。

 子どもの受験期には軸に文字も模様もない無地の鉛筆を用意した。軸が五角形の鉛筆があるのも知った。銀行の窓口で受験料振り込みをした時に振り込み証明と一緒にもらった。万物にすがりたくなるような心境だったから、ありがたかった。

 

 通常、使うのは専らボールペンだ。新人研修で「取材メモを取るときは鉛筆以外で」と習ったためだ。

 その分、ボールペンにまつわる困った! もたくさん経験した。あるはずのペンがポケットにもカバンにも見当たらず焦ったこと、ペンのインク切れやインクがあるのに書けなくなったこと、探さずに済むようにキャップ部分を首から下げることができるタイプを使っていたら、いつのまにかペン先のある軸が落ちてキャップだけになっていたこと⋯⋯。いずれもなんとかなったから今に至るが、トラブルはない方がよい。

 

 という日々を経て、あるボールペンを愛用していたら、来日した韓流スター、ペ・ヨンジュンさんとおそろいだった。2008年6月のことだ。私は総合週刊誌「読売ウイークリー」(2008年12月休刊)の副編集長で、当時、人気絶大だったヨン様の来日に合わせて特別スケジュールを組んでいた。東京都内のホテルで午後に取材し、表紙を含む8ページをただちに完成させる──発売日に間に合わせるため大変、余裕のない進行にしていた。

 取材や撮影がだいぶ後ろにずれて終わった後、私はヨン様に自分のボールペンを見せながら話題にした。ヨン様は自分で選んで買っていること、書き心地のことなどを、取材中のなごやかな雰囲気そのままに語った。

 

 

 あのとき職場に戻れば、怒とうのデスク作業が待っていた。冷静に考えれば一瞬の猶予もない状況だった。一緒にいた記者やカメラマンは私の言動にやきもきしていたことだろう。しかし、このちょっとしたやりとりで私は高揚した。それは職場でヨン様特集を含めて雑誌を1冊仕上げるのにもうまく作用しただろうし、こうして14年たっても記憶に刻まれている。

 おそろいだったのは、パイロットのノック式油性ボールペン「オプト」(税抜き200円)。私が愛用していた理由は書き心地や重さなどに加え、レフィルが通常の1.45倍と長かったためだ。その分、インクの持ちがよかった。

 パイロットコーポレーション社のHPには社の環境指針としてリユース・リサイクル等、持続可能な資源の利用を推進し、限りある資源を有効に活用するなどが示されている。

 ペンには力がある。そしてペンから物語が生まれる。

(笠間亜紀子


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(2022年2月23日 08:28)
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