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風穴開けたモモレンジャー《記者のじぶんごと》

06.


 働く女性の大先輩に、モモレンジャーがいる。

 

 モモレンジャーは、今年で45作を迎えたスーパー戦隊シリーズの第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」の登場人物だ。敵も味方も、その約9割までが男性のみで構成されていた特撮ヒーローの世界に、ヒロインとは異なる「戦う女性ヒーロー」という概念を初めて本格的に持ち込んだ。ちなみに、ゴレンジャーは国連が設立した国際秘密防衛機構イーグルの所属という設定なので、正真正銘のワーキングウーマンである。

 

 もちろん、それ以前にも「ウルトラマン」にはフジアキコ隊員が、「ウルトラセブン」には友里アンヌ隊員がいたけれど、業務は通信などの後方支援に限定されることが多かった。若き日の中田喜子や鳩山エミリーが演じた「仮面ライダー」のライダーガールに至っては、大事な局面で必ず敵に捕まってしまう。何より、彼女らの誰ひとりとして変身しない。ヒロインたちは、主役が変身ヒーローの世界では脇役という位置づけだった。

 

 だから、自ら変身して戦うモモレンジャーの登場は衝撃だった。なにしろ、カッコよくて勇敢な、ヒーロー番組における「保守本流」の男性たちと対等に渡り合っている。戦えば強いし、男性に対して一歩引いているところもない。アニメの魔法少女がかわいい声で魔法の呪文を唱えていたのに対し、戦う時のかけ声だって男性と同じ「トイヤッ」と勇ましい。それでいて変身前のペギー松山(演・小牧りさ)は、つややかなロングヘアのチャーミングな女性なのだ。

 

 当時10歳だった私は、ペギーがすらりと伸びた脚で敵を蹴り上げる姿に、「『キャー!』って叫んで逃げなくてもいいんだ」「女子も男子と同じようにふるまっていいんだ」と驚いたものだ。「男女平等」がうたわれながらも、「女の子は女らしく」と求める空気がまだ濃厚だった昭和時代。頑張っても「女の子らしい」枠に収まりきれなかった小学生の私に、モモレンジャー先輩は多様性とか男女共同参画とか、色々なことを教えてくれたように思う。

 

 奇しくも、ゴレンジャーの放送が始まった1975年は「国際婦人年」だった。同年2月には、英国で保守党が後に首相となるマーガレット・サッチャー氏を初の女性党首に選出。国内で、食品メーカーの「私作る人、僕食べる人」というCMコピーが女性差別であると問題視され、放送中止に追い込まれたのもこの年だ。日本でも世界でも、60年代後半から続くフェミニズム運動の風が嵐を起こし始めていた。

 

 

 時代の風に乗って「いいわね、いくわよ!」とブラウン管の中に登場したモモレンジャーは、男の論理だけで構成されていたヒーローの世界に、小さいけれど未来につながる風穴を開けた。たかが子供向け番組のマイナーチェンジと侮るなかれ。小さな変化こそが積もり積もって社会を変える力になるのだから。

 

 戦隊シリーズは、放送中の「機界戦隊ゼンカイジャー」(テレビ朝日系)に至るまで「太陽戦隊サンバルカン」(第5作)以外の全作品に、女性ヒーローを配して続いている。特撮ヒーローの歩んできた46年は、男女共生の物語の46年間でもある。

(鈴木 美潮)


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(2021年9月21日 16:02)
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