社会に貢献するシゴト《記者のじぶんごと》
07.
「『御社で社会貢献に取り組みたい』って言う学生って、評価しますか?」
人事部で採用担当を務めていた6年ほど前のこと。大学生を対象とした「就活イベント」の会場で、他業界の採用担当者に、突然、尋ねられました。
我々が参加していたのは各社の人事が10~15人程度の大学生と車座になって「就活の疑問に答える」という、いわゆる「選考対策」と呼ばれるイベント。人事担当者の心をつかむ自己PRの内容や、面接のテクニック、どんな学生を評価しているか──。次々に投げかけられる疑問に答えながら、さりげなく「就職先」としての自社をPRし、1人でも多くの就活生に関心を持ってもらうことも、人事担当者の重要な役割です。それでも、学生たちの真剣な質問に答えるうちに、気づけば自社のPRは後回し。1人1人の学生の「悩み相談」になってしまっています。そんな慌ただしいイベントの休憩時間に、冒頭の質問を投げかけられました。
新聞社の人事担当者からすれば、「社会貢献」は立派な志望動機に思えます。「社会正義の実現なら、OKだと思いますけど」。何げなく答えたところ、相手は不満顔。「でも、それって給料は欲しいけど、会社のために利益を生むつもりはないってことですよね?だったらNPOにでも行ってください、って感じじゃないですか?」。確かに、企業目線からすればそうかもしれない。でも、企業は利益を上げるだけでいいのか。とはいえ、きれい事ばかり言っても商売にならないのかも。何か答えようと考え込むうちに、短い休憩時間は終わってしまいました。
長かった不況もようやく終わり、連日、「○○社、最高益」などの見出しが新聞を飾っていました。ある人事担当者は「企業にとって採用とは、その学生を採用するのにかけた費用を上回る利益を会社にもたらしてくれるかどうかを見極めること」と話していました。企業は利潤を追求するもの。そんな視点からいけば、私の答えは「落第点」だったのかもしれません。
「就職先決めた理由 社会貢献度が最多」。2020年9月15日の読売新聞には、そんな記事が載っていました。コロナ禍に大きな影響を受けた2020年の就職活動。安定性や将来性を重視する学生が多かったのかと思いきや、「社会貢献」の判断基準(複数回答)も、「企業理念」が55%で最多。「ビジネスモデル」や「福利厚生」も続きますが、「SDGsへの取り組み」が26%で5位につけています。SDGsのゴールとなる2030年には社会の主役となっているであろう大学生たちの意識の変化をとても頼もしく思うとともに、「先輩」である我々も変わっていかなければならないと感じています。コロナ禍2年目となる2021年の就職活動も大半の学生が「ゴール」を迎え、10月1日には多くの企業で内定式が行われます。大学生たちの「選択」の結果が、後悔のないものであることを願っています。
(石橋 大祐)
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