汝もニンジンを愛しなさい《記者のじぶんごと》
24.
5歳の長男は野菜が大の苦手。葉物野菜を見ると、「くさはたべない」と言い放って母親を困らせています。鍋物にしたり、スープに入れたりとあの手この手で食べさせようとしますが、なかなか好きになってくれません。中でも苦手なのはニンジン。このくらいの年ごろならば仕方のないことかもしれませんが、カレーに入っているもの以外は、食べさせようとしても、両手で大きな「×」を作って全面拒否です。
一方で、小5の娘は特に好き嫌いもありません。毎日登校前に給食の献立表を眺めては、「おかわりジャンケン」を楽しみにしています。そんな娘が学年でSDGsに取り組むことになり、まずは家庭の食べ残しのチェックを始めました。弟が食べ残した野菜を見ては「食品ロス!」と厳しく指導しています。SDGsといっても、特に難しいことに取り組む必要はない。まずは身の周りの、できることから。という姿勢を頼もしく思いました。
「食べきれず 廃棄の山」12月8日の読売新聞に、こんな記事が載っていました。本来は食べられる物が捨てられる「食品ロス」の量は2020年度、国内で522万トンにものぼっています。幼稚園児が世界規模の問題を意識する必要はありませんが、食べ残したものは、「ごみ」になってしまうかもしれないということを理解させ、なんとか自分から食べるようにすることはできないだろうか、と、考え込んでしまいました。
ところが年末、そんな長男が突然ニンジンを食べるようになりました。相変わらず「くさ」は苦手で丸のみしていますが、ニンジンだけはしっかり、残さず食べています。「特に料理の味が変わったわけでもないのに」と不思議に思っていると、長男が「ふぼをうやまい、なんじのにんじんをあいしなさい」と一言。幼稚園で習った聖句の「隣人」を「ニンジン」と勘違いしたのが真相だったようです。
サンタさんにプレゼントをもらえないのが嫌で、神様の言うことを聞くようにした長男。正月の七草がゆもほとんど食べませんでしたが、まずはニンジンから始め、「じぶんごと」を少しずつ広げていってもらいたい、と願っています。
(石橋 大祐)
前へ | 次へ |