2030 SDGsチャレンジ

@スクール・学校の取り組み

SDGsトーク 特別編 5/9「学校全体でプロジェクト型学習」

「コロナに関する学び×あなたの好き・挑戦」の取り組みで生徒が作ったポスター

 新渡戸文化学園小学校・中学校・高等学校(東京都中野区)の山藤旅聞先生と、田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーとの対談「SDGsリレートーク『じぶんごと』からはじめるために」。第5回は、コロナ禍で通学できなくなった子どもたちに生まれた「学びたい」という気持ちにどう応えるかがテーマです。

 

まとめ:住吉由佳(教育ネットワーク事務局)


4<<

 

山藤 職員間では、こういう異常事態が起きた時、最上位に置くものは何か、をまず確認しています。一番目は「命」。子どもたちの命、大切なご家族や我々職員の命。

 コロナの特性をつかむと、知らないうちに我々がウイルスを運んでしまう可能性があって、もし、自分のせいでおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなったらとなると、心的ショックは計り知れない。絶対にそれはしてはならないと。

 二番目が、生徒が主体的になる学びの継続。学ぶという主体性をどれだけ引き出せるか。それで「4月にこれまで通りの時間割で授業を展開していくことに価値があるか」と議論し、全職員が「ない」と答え、「プロジェクト型で週1回だけやろうとしていたことを、毎日全員でやりましょうか」ということになりました。全職員で5月の1週目まで、朝2時間だけ、ずっとプロジェクト型の授業でしたね。

 

田中 すごいな。それを公立学校でぜひやってほしい。

 

山藤 僕らも、公立学校で展開できるようにしていくことを常に心がけています。私立だからできるという形では広がらないので、特別な予算もかけていないです。通常の時間割に戻ったとしても、教科横断的な学習を実施する時間割は、特別な時間割を組むのではなく、見た目は、国、数、英、理、社、家庭科というように、通常の学校と同じものです。ただ、全ての教員で、チームティーチングする展開にしています。

「コロナに関する学び×あなたの好き・挑戦」の取り組みで生徒が作った作品

 

プロジェクト型 世界の主流

 

田中 世界を見ると、教科横断的なプロジェクト型学習が主流ですよね。日本の教育はそれができていないので、どこかでやらなきゃいけないけど、教科主義だとか、カリキュラム主義だとか、決まり切ったことをやらざるを得なくなっている。でもやがて、この教科横断的なプロジェクト型学習が主流になる。

 

山藤 公立高校では、自分の教科の延長か、総合学習の時間の週1時間か2時間しかない中で、学年全体で行うことができたとしても、その授業内だけでは教科横断的・プロジェクト学習をやるけれど、全ての教科に広がる活動はできていないのではないでしょうか。学年全体でもなく、学校全体でやっていくことが大事で、新渡戸文化学園では、それができます。

 

田中 問題は、受験だとか、世間体だとかで、国語で何やってるの、算数で何やってるの、そこやっていないじゃないの、と批判を浴びることだと思う。その辺りは、どう見ていますか。

 

山藤 例えば、理科の授業4時間中の1時間を週1回プロジェクト型として展開した場合でも、残り3時間は基礎学習ができるんです。そうしたら、教科書の学習指導要領ベースを学ぶ教科学習は、たぶん、学期の半分もあれば十分対応できる。高校でも、センター試験レベルまでなら十分いけますね。

 

田中 そこがないと、もし広めるときにも、きついですよね。

 

山藤 今、経産省の「未来の教室」っていう事業があって、そこが僕らの学校をモデル校にしてくれた。学習指導要領の最低限を担保しながら、エドテック教材、つまりICTを使って生徒一人ひとりが個別に学習し、進み具合や習得度合いもそれぞれで確認できる教材を、僕らの学校と経産省とで一緒に開発させてもらっています。

 教科学習的なことはオンラインで学習し、リアルで教室で会った時には、各自が進めている勉強を家庭教師のようにピンポイントでアドバイスし、自分のやりたいところから埋めていく、という授業法です。iPadなど、テクノロジーの強みを活かした授業デザインです。

エドテック(EdTech)

Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、学習環境をテクノロジーによって進化させたもの。子供向けの知育アプリSmart Educationや、小中高生向けのスタディサプリなどがある。

ICT

情報通信技術(Information and Communication Technology)の略で、PCだけでなくスマートフォンなど、さまざまな形のコンピュータを使った情報処理や通信技術のこと。IT(情報技術)にコミュニケーション(Communication)の要素が加わっている。

 

4<< >>6

(2020年8月24日 16:30)
TOP