【SDGs@スクール】コロナ後の世界で

 

 国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」。その国連で働くためには何が必要なのか。国連広報センターの根本かおるさんは、「大事なのは多様性を重んじる精神」と訴える。

 

 教育、雇用、医療、文化芸術。入口は何でも良い。その入口から学び、自ら調べ、頭を柔らかく、知見を広げる。そして、「自分にはこれができる」とアピールできる専門性を身につけることが大事だという。

 

 語学力、特に英語はマストだ。「英語ができると世界が広がる。世界のいろいろな人の発信に触れられるようになる。何よりも人生が豊かになる」とアドバイスする。

 

 コロナウイルスの感染拡大で、SDGsは現在、逆風下にある。中でもSDGsの「1丁目1番地」ともいえる貧困削減の努力が10年分も後退しかねない。途上国の貧困は、日本のそれとは比べ物にならない。感染予防のためにソーシャル・ディスタンスを保ち、自宅にとどまろうと言われても、最貧国では、六畳一間ほどのスペースに家族8人が身を寄せ、ひしめき合って暮らすことはざら。世界の4分の1に当たる約20億人は、水洗トイレなどの清潔な衛生施設を利用できていない。

 

 日本の若者には、途上国に暮らす、自分と同じ世代の人が今、どうしているかに思いをはせてほしい。根本さんはそう訴える。

 

 コロナ後の世界では、社会や経済を再構築する際の羅針盤となり得るのではないかと根本さんは言う。世界がコロナ前の日常に、そのまま戻ることはあり得ず、より公平で、より持続的な社会・経済が求められているからと考えるからだ。

■取材記者の「眼」

 エスディージーズ。「それ、何語?」。ほんの数年前にはそう言われていたSDGsが市民権を得つつある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で勤務し、世界各地で弱者の現場に身を置いてきた根本さんだからこそ、いまの状況下でもSDGsの理解を広め、行動を促す「伝道師」として活躍できると感じた。(佐)

(2020年7月1日本紙朝刊より)


(2020年7月 6日 09:30)
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