46. 母校の演奏会に行って
東洋大学1年 栗木美瑳
「パァンパカパン」――指揮棒が振り下ろされると、明るく軽やかな音色がホールいっぱいに響き渡った。2021年7月、母校である埼玉県立蕨高校の吹奏楽部の定期演奏会が蕨市民会館で開かれた。
コロナ禍の影響で、部員たちにとっては2年ぶりに訪れた晴れの舞台だ。OGである私にも、久しぶりに後輩たちの演奏が聞けるまたとない一日になった。
「やっぱり生の音楽はいいなあ」。そんな感慨に浸っていると、急に高校時代が懐かしく思い出された。私はバスクラリネットを担当していた。美しい低音を出そうと、毎日、唇が痛くなるまで必死に練習した。自分が思うような演奏がなかなかできず、悩んだ。
ところが、3年生になった昨年、コロナ禍の影響で定期演奏会もコンクールも中止になり、発表の機会を一度も得られないまま引退した。「残念」と思う半面、ホッとしている自分がいた。大学受験が近づき、部活動を続けることに不安を感じていたからだ。
しかし、後輩たちが生き生きと楽器を奏でる姿を目の当たりにして気づいた。やっぱり私は音楽が好きなのだ。後輩たちがくれたこの「感動」を忘れず、これからはもっと積極的に生きていきたい。二度と不完全燃焼に終わることがないように。音楽を人生の友にしながら。
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