MyScope 56. 紙で伝える あたたかさ


56. 紙で伝える あたたかさ


法政大学2年・神田明日香

 

 「あったかい、冬にしよう。」

 

 私が制作に参加しているフリーペーパー「Poppy」が12月に発行した最新号のコンセプトだ。

 

 Poppyは、2021年の秋に設立したばかりのサークル。法政大学の市ヶ谷キャンパス生に向けて、地域の飲食店や学生へのアンケートコーナーなどの情報を中心に掲載している。

 

 私たちの通う市ヶ谷キャンパスには、地域の情報やカジュアルな企画を掲載しているフリーペーパーがなく、メディアや活字に興味がある仲間が自然と集まってできたのがPoppyだった。初期メンバーの一人である私は、制作系のソフトが使えることから、レイアウトデザインや、印刷会社との折衝などを担当することになった。

 

 メンバー12人は、フリーペーパー作りに関して全くの初心者。どのようにページを作るか、印刷費用はどうするかなど、解決しなければいけない問題が山積みだった。それぞれが得意なソフトを使ったため、デザインもバラバラ。2022年の4月に発行した創刊号は、「なんとか形にした」というレベルなのが正直なところだった。

 

 広告を入れていないため、印刷費用もサークル員の自己負担。創刊号は100部が限界だった。メンバーが多ければ多いほど、一人当たりの負担額は減るし、発行部数も増やすことができると気づいた私たちは、仲間集めに奔走した。

 

 7月の第2号は、メンバーが20人まで増加。企画のアイデア出しも活発になり、地域の飲食店と連携した「フリーペーパーを見せたら、ご飯の大盛り無料」というクーポン企画も実現できた。一方で、グルメ関連のページとそれ以外で、情報の密度や完成度に差が出てしまったり、表紙の色味が思ったように出なかったり、という課題も残った。それでも、メンバーが増えたことで、部数を300部に増やすことができたのが収穫だった。

 

 2022年を締めくくる第3号の制作のテーマは「おしゃれ」。特集は「クリスマス」と「正月の過ごし方」の二つを軸に、9月から制作が始まった。

 

 「どうせなら、定番じゃないところの方が面白いよね」というメンバーの一言で、クリスマスマーケットや初詣に関しては、有名な日比谷公園のクリスマスマーケットだけではなく、大学から近い「東京大神宮」や「TOKYO DOME CITY」も載せて、バランスが良くなるように工夫した。

 

 私自身は、東京大神宮の写真撮影を担当。恋愛に関するおみくじが7種類もあるということや、平日の昼間でも、男女問わず参拝客が多いということに驚かされた。大学生にとって気になるのは恋愛運。学校から近く、なおかつ恋愛にまつわる神社というトピックは、読者にも好評だった。仲間が増えたことで、デザイン面での負担も軽くなり、表紙だけを見て、手に取ってもらえるような工夫もできたと思っている。ようやく、媒体としてのスタートラインに立つことができたのだ。

 

 紙媒体の良いところは、一度手に取ってもらえたら、繰り返し読んでもらえることだ。読者である学生の立場からも、ネットよりも記憶に残りやすいところだと思う。ネット検索ではわからない細部にまでこだわった取材・編集のため、情報量でも勝っているのではないだろうか。

 

 「紙」で伝える意義にこだわるためにも、私はこの秋、キャンパス・スコープに加入した。他大学に通うメンバーの企画にも刺激を受けながら、自分たちのpoppyにも生かしていきたいと考えている。

 

 新年、さらなるPoppyの発展と、自分が納得いくフリーペーパー作りを初詣で誓った。「凶が多い」と言われていたおみくじも引いてみると、見事大吉。私も、読者も納得できる作品を届けられるよう、一年間頑張っていこう。

 



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(2023年1月 9日 13:38)
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