ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、1年が経とうとしている。厳しい冬を迎えても戦火は絶えず、子どもたちの犠牲も後を絶たない。2022年夏にポーランドでの避難民支援に参加した私自身も、苦しんでいる人の力になる活動を継続できないことにもどかしさも感じている。12月末に開かれた、支援活動に従事する人たちの話を聞くオンラインイベントに参加し、平和について考え続けることの大切さについて、思いを新たにした。
(東洋大学・樋口佳純=キャンパス・スコープ46号編集長)
「事実を学び、周りに伝えて」
「この状況を他人ごとにしないでほしい」。
オーストリア・ウィーンを拠点にウクライナ避難民の支援を続けているNPO「The SocialWorkHUB」代表のズマリ・ガルワールさんの言葉にはっとさせられた。ウクライナ東部で、ハルキウ赤十字と一緒に食料の配布活動などを行っているズマリさん。厳しい冬を迎え、電力不足のため復興もままならないハルキウでは、未だ深刻な状況が続いているという。「まず、寒さをしのぐことが課題」と訴えた。
キャンパススコープ46号では「平和とは」をテーマに様々な記事を掲載した
侵攻の開始からもうすぐ1年が経とうとする中、悲惨なニュースが「日常化」してしまっている現実。報道自体は今も新聞やテレビで盛んになされているが、遠く離れた国のニュースだけに、いつしか他人ごとになってしまっているようにも感じる。ズマリさんは、「事実を学び、自分の経験を周りの家族や友人に伝えて欲しい」と締めくくった。
学びを大切にし、問題解決につなげる
イベントを企画したのは、ポーランドやオーストリアでのウクライナ避難民支援活動を実施した日本財団ボランティアセンター。全7回のプログラムには、私も含め101人の大学生が参加し、現地で活動した。
「幼稚園や小学生くらいの子どもが避難せざるを得ない状況に胸が痛んだ」
10月に活動に参加した立命館大の中村俊貴さん(国際関係学部1年)が悲痛な表情で振り返った。中村さんは、オーストリア・ウィーンにあるウクライナ避難民施設で、避難民のサポートを担当。今なお、多くの子どもが母国を離れ、避難を続けている現状を訴えた。
また、青山学院大学の西陽太朗さん(法学部3年)は、「ボランティアの限界を感じた」と話す。西さんたちは、ウクライナとポーランドの国境の街メディカで、ウクライナ避難民に水や軽食の提供を担当した。夜は気温0度と冷え込む寒さの中での活動。ボランティアはただただ目の前の避難民たちと向き合うことしかできない。それでも、「大学で国際法の学びを大切にして、問題解決に貢献していきたい」と前を向いた。
日本からできること
「歌も歌えない、ダンスも踊れないが、通訳はできる」
イベントの通訳を担当した、ウクライナ西部・リビウ出身のカルジリオ・リュボフさんに、イベント終了後に話を聴くことができた。
来日18年目になるリュボフさん。「日本に居る自分にできることは何か」と考え続けているそうだ。「通訳は難しい。けれど、まるで私の通訳がなかったかのように、関係者の思いが伝わり合ってくれれば」と力を込めた。
「関係者の思いを伝えてほしい」と訴えるリュボフさん
私たちキャンパス・スコープのメンバーは、2022年10月に発行した46号で、「平和」をテーマにこの問題と向き合った。戦禍を逃れ日本で学ぶ留学生や、学びを支援する関係者の思いに加え、私自身もポーランドでの避難民支援活動のルポを執筆。大学生としての率直な思いを、同世代に伝えることができたと考えている。だからこそ、自分自身も含め、日本の、世界の関心が少しずつ薄れていることに危機感を感じる。
平和のために私たちが今できることは何かを考え続け、行動することが大切だと改めて思う。4月に4年生になる私は、就職活動真っただ中だ。それでも、機会があれば平和について考え、発信することで、「私たちに何ができるか」を問い続けていきたい。
⇩2022年10月に発行したキャンパススコープ46号のテーマは「平和とは」⇩
「最期はウクライナで迎えたい」~避難民支援で見た絶望と希望@ポーランド
ウクライナを思い、学びをやめない~ゼレンスキー大統領オンライン講演@東洋大学