沼田 晶弘
第63回 クリティカルディスカッション(3)
♦明らかになった「おかしの強さ」
この日行った「最強おかしはどれだ!」クリティカルディスカッション(CD)のタイムスケジュールは以下の通りです。
・最初の作戦タイム=5分
・CD第1回戦=5分
・中間作戦タイム=5分
・CD第2回戦=5分
・ファイナル作戦タイム=5分
・ファイナルCD=5分
合計で30分ほど。実際は、ファイナルは時間の都合で少し短くなりました。その結果、明らかになった3つのおかしの強さと弱点は以下の通りです。
ポッキー
強=相手をつつける。投げても空気抵抗が少ない。束にすれば壁になる。
弱=とにかく細くて折れやすい。
せんべい
強=固いので防御しやすい。フリスビーみたいに投げることもできる。
弱=落としたら割れる。雨が降るとシワシワになる。
チョコボール
強=大量に投げられる。鼻とか口に詰まったら息ができなくなる。
弱=箱からいっぺんに出せない。溶けやすい。
♣何と「せんべい」の圧勝に!
前々回書いたように、この日は保護者の参観日でした。終了後のジャッジは、討論を見守っていた20人あまりの保護者の方々にお願いしました。「おかしの強さじゃなく、一番説得力があると思ったチームに投票してください!」
チョコボール 3票
せんべい 16票
ポッキー 3票
結果として大差がついてしまいましたが、討論の熱が最後まで冷めなかったのは、強いせんべいチームをチョコボール+ポッキー連合が追う、という展開になったからです。3チームにした効果が表れていたと思います。チョコボールとポッキーは、投げる以外の攻撃方法があまり出なかったのが惜しかった。あえなくせんべいの固さに跳ね返されたというところでしょうか。
♥CDは「聴く力」と「語る力」を育てる
最後に保護者が付せんで投票。意外と大差がついてしまった...... |
ボクが子どもたちに何度も繰り返したのは、「相手の悪いところだけ攻撃するのはダメ」ということです。それではただのケンカになってしまうからです。
「そちらは○○の理由でダメだけれど、こちらは△△の理由で強い!」あるいは「そちらは□□の理由で強いかもしれないけど、こちらは××の理由でもっと強い!」。こうした、批判だけでない意見の出し方を3年生からしっかり学んでおけば、高学年になった時、合意形成のためのより高度な議論ができるようになります。
さらに強調しておきたいのは、CDは「聴く力を育てる」ということです。効果的に発言するためには、相手の話をよく聞かねばなりません。教育用語で「傾聴」という言葉がありますが、ただ「黙って人の話を聴きなさい」と言っても、子どもはなかなかその通りにしないものです。しかし、CDにおいては、自分たちがうまく攻撃するために、相手の話をよく聞く必要がある。それは結果的に「傾聴」と変わらないわけです。これも、アナザーゴールの応用です。
♠大人こそCDを学んでほしい
テレビの国会中継を見ても、相手の話をろくに聞かず、ただ攻撃しあうだけの非生産的な議論が多いように感じてしまうのはボクだけでしょうか。以前担任した3年生クラスでは「内閣制度」を作ったこともありますが、子ども内閣の方が、よっぽど国民ならぬクミン(クラス民)のことを考えていたような気がします。実は大人にこそ学んでほしいのが、「相手の話をよく聞いて、最も効果的に話す」練習としてのCDなんです。
それにしても、「おかし」という身近なアイコンを使ったことで、今回の授業は子どもたちの記憶に長く残るものになったはずです。あらためてここで発案者に感謝します。
ありがとう! A君!
62<< | 記事一覧 | >>64 |