神奈川県鎌倉市立大船中学校で2015年10月22日、3年生を対象にした企業による出前授業が行われ、読売新聞教育ネットワークに参加している4企業がそれぞれの企業の社会的な役割やキャリア教育を生徒たちに教えた。
東レ株式会社医薬研究所(鎌倉市)の森山正樹研究員が「先端材料と地球環境問題とのかかわり~素材が社会を変える~」と題して授業を行い、3年生38人の生徒が熱心に聞き入った。
森山さんは、エアコン、車、テレビ、スマホ、洋服など様々な製品に東レの作った素材が使われている、と説明。その例として、ヒートテックを挙げた。「東レ」という会社を知らなかった生徒たちも、よく知られているヒートテックに使われる繊維が東レ製、と知って驚いた様子だ。
「生地は薄いけれども温かい」というヒートテック素材の特長の仕組みを、髪の毛の10分の1の細い繊維を作り、空気のポケットをたくさん作って保温性を高めていること、水に触れると2度から3度温度を高くする機能があるレーヨンという繊維を使うことで熱を発している、とわかりやすく解説した。
地球環境問題を考える材料として森山さんが取りあげたのが「水」。地球上に存在する水で、生活に使うことのできる真水はわずか2.5%しかない。残る97.5%は海水だ。その真水でも生活に使う湖や川の水はわずか0.01%しかなく、水がいかに貴重かを説明した後、東レが作っている、汚れた水を浄化するのに使う先端材料「中空糸膜」で実験を行った。
グループごとの各テーブルには絵の具で色の付いた色水が置かれている。これをろ紙でこしても水の色は消えないが、中空糸膜でろ過すると透明な水になる。一方、中空糸膜でも、塩水はろ過できないことを確認し、物質の粒子の大きさの違いによってろ過できるものとできないものがあることを学んだ。
さらに塩水に含まれる塩の粒子は、「逆浸透膜」という隙間の大きさが1ミリの100万分の1の先端材料を使えば海水を淡水化できる、と説明、実際にアルジェリアや沖縄県北谷町の淡水化プラントで使われていることを紹介した。
次に地球温暖化問題の解決策として取り上げた先端材料は炭素繊維。1ミリ平方メートルの断面積の化学繊維、ガラス繊維、炭素繊維を比較すると、化学繊維は60キロ、ガラス繊維は250キロのものを持ち上げられるのに対して、炭素繊維は700キロのものを持ち上げられる。一方、同じ容積の鉄と比べると重さは4分の1だ、と軽さも説明。
その上で、最新の航空機では炭素繊維が半分も使われており、これを10年間運航した場合には、従来の飛行機と比べて、2万7000トンもの二酸化炭素を削減できるし、燃費も格段に向上できると地球温暖化にも貢献できることを強調した。
最後に、森山さんは、自分の経験を踏まえて、(1)夢を持ち続けよう (2)不思議に思う気持ちを大事にしよう (3)好きなことや得意なことを見つけよう (4)みんなの良いところを見つけよう (5)思いきってチャレンジしよう――の5つをメッセージとして伝えた。
授業を受けた鈴木優(ゆう)さんは「これまで漠然と食品加工会社で働きたい、と思っていたが、中空糸膜で水に困っている人を助けられる、炭素繊維で地球環境問題解決のきっかけにできると学んだ。そういう視点を持ったことがなかったので、自分の職業を選ぶ際の参考にしたい」と笑顔で話した。
東レの教育プログラム