楽しくNIE[6]「言葉集め」で自分と向き合う 東北福祉大(宮城県仙台市)

やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。今日は、新聞記事から残したい言葉を集めて、画用紙にまとめる授業を紹介するね。言語力が養われるだけじゃなく、自分の心を見つめ、整理することにもつながる人気の実践なんだって。

ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。

 

安室奈美恵さん引退を伝える新聞に見入る学生(東北福祉大で)

 

●東北福祉大(宮城県仙台市)

 この授業は、東北福祉大(仙台市青葉区)で行われている後期講義「NIE活動の教材研究」の一コマ。小中高校の教科書には「みんなで新聞を作ろう」(小学校4年国語)、「新聞記事を読み比べよう」(同5年国語)など、新聞を使った単元が増えていて、この大学でもNIEの講義があるんだ。指導ノウハウを求めた"教師の卵"たち約70人で、教室はいっぱいだったよ。


 

新聞、はさみ、のり、箱だけ

 用意するものは、新聞、はさみ、のり、切り取った新聞を入れる箱と画用紙だけ。この日はまず、渡辺裕子先生が、最近、話題になったニュース「安室奈美恵さん引退」を伝える新聞を見せながら学生と対話。その後、「この言葉いいなあ、と思う言葉を切り取りましょう」などと呼びかけ、「言葉の貯金箱」が始まったよ。

用意するもの。新聞、はさみ、のり、箱、画用紙

ゲーム感覚で取り組める

 学生たちは、気になったり、残したいなあと思ったりした見出しや写真などを、新聞からどんどん見つけて切り取って箱に入れていった。「ことばの貯金箱」は、お金を貯金箱にためていく様子に似ているから付いた名前。箱に入れる時には遊び心を忘れずに「チャリーン」と合言葉を唱えて、童心に返ってゲーム感覚で取り組む学生もいたよ。

切り取った言葉や写真は、とりあえず箱に入れていく

自分の気持ちも整理

 学生たちが切り取った言葉は、「運命を生かす」「激闘」「幸福とは」など、さまざま。気になる写真やイラスト、漫画なども取り入れながら、画用紙にどうまとめるか、自分の心に問いかけながら整理していく。「切り取った言葉を画用紙に並べているうちに、だんだんと構想がまとまってくる。自分の気持ちも整理されてすっきりする」と女子学生。

集まった言葉や写真を、どうまとめるか考えながら画用紙に置いていく

コメントもイラストもOK

 画用紙には、気になった言葉や写真などのほかに、自分で思ったことも書き添えられた。ある学生は、「運命を生かす」「休んで大丈夫」「前に進む姿勢定まった」などという見出しを選んで、「前向いて歩けば未来がきっと広がるはず」と書き込んでいたよ。将来をあれこれ考える時なんだね。

思った言葉などを書き加えていく。イラストもOK

4人1組で発表し合う

 このほか、できあがった作品は、おしゃれや恋愛など等身大の20代の乙女心を表現したものから、旺盛な食欲、人生、家族のぬくもりを表したもの...十人十色だね。最後は、4人1組で、まとめた作品を見せながら紹介し合う。自分では全く想像しないテーマの作品を見て感心する学生も多くて、あっという間に90分の授業は過ぎていったよ。

自分のまとめたものを披露し合う。会話もはずむ

東日本大震災がきっかけ

 この実践は2011年の東日本大震災後、新聞に「残しておきたい言葉」があふれていたことがきっかけで渡辺先生が始めたそう。津波から助かった子が言葉を飲み込んで吐き出せないでいた時に、この切り抜きで、自分の思いを表せるようになり、かつ楽しく取り組んでいた姿には、とても感動したそうだよ。宮城や東京の小中学校の中には、この「ことばの貯金箱」を国語や道徳などの授業に採り入れているところもあって、広がっているんだって。

この日できあがった作品の数々

渡辺裕子先生

新聞をながめていると、「この言葉、いいなあ」と思うものがけっこうあります。言葉との出会いで、子供たちは自分と向き合いながら、心を解放し、整理していく。「めっちゃ楽しい」「いつの間にか記事を読んでいた」と喜ぶ子たちの笑顔がうれしいです。

分からない言葉があれば辞書を引くので、語彙も増えるね。「読む」「書く」「聞く」「話す」だけじゃなく、楽しみながら、心も整理できる。余りしゃべらない子でも、この実践では必ず発表する場面があるから、溜め込んでしまう子ほど、やってみる価値がある実践といえそうだね。


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(2018年9月27日 16:00)
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